大分

加速する若者たちの県外流出

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なぜ若者は街を出ていくのか:

地方創生ということで、2015年から国を挙げて人口減少対策に取り組みはじめ、早くも5年が経とうとしています。この間、全国的に成功事例とされるケースがいくつか生まれていますが、他自治体への拡がりは進んでません。

そんな中、全くの無名ではありますが、岩手の過疎地での開催ながらも、なぜか世界中からエントリーが殺到するプロジェクトが岩手県八幡平市にあります。働き方の刷新を軸に据えたこのプロジェクトの事例から、人口減少時代における過疎地のまちのあり方について、考えてみました。

過疎地の人口減少と聞くと、おそらくほとんどの人から「少子化のせい」という答えが返ってくることでしょう。確かに少子化は人口減少の直接的な原因に見えるかもしれません。では、なぜ過疎地で少子化が起きているのかと聞くと、おそらく「若い人がなかなか結婚しなくなったから」と考える人もいるのではないでしょうか。確かに晩婚化・非婚化は少子化を加速させる一因と言えます。しかしながら、少子化は過疎地だけの問題ではありませんし、出生率では都市部よりも過疎地の方が高い傾向にあります。

注目すべきは、地方で生まれた子供たちが、そのまま出身地にとどまらず、都市部へと人口移動してしまっている、という点です。

データでは市内で生まれた子は、18才で 約1割、22才で 約2割 が転出します。岩手県の大学進学率は、おおむね3〜4割程度です。そして、県内の学生の就職先は、7割が県外、県内は3割という、まさに大きな人口移動が起きる大きなきっかけとなっています。その後の傾向として22才を過 ぎると、人はあまり移動しなくなり、この年代以降の人口減少は非常にゆるやかになります。

人生において18才は高卒、22才は大卒で就職する年齢です。地方の過疎地から人口が減るのは、望む職 が地元にない。そんなシンプルな理由 なのではないか、との仮説が立ちます。

人口減少に立ち向かう手段を考えるには、仕事が一丁目一番地です。なにしろ、入り口である仕事がなければ、いくらその先に有効 な支援制度を設けても 効果は限定的にならざるを得ません。

そんな中で今注目されるのが情報通信を主体にしたベンチャー起業です。

よく地方民の口から「地方には仕事がない」なんて話を聞くと思いますが、地方に足りないのは、仕事ではなく「仕事をつくれるプレイヤー」なんです。

そして、情報通信であれば、顧客はネットの海の向こうに無数に存在します。ネットが普及すればするほど、居所はどこであろうと関係なくなっていく仕掛けです。

我が国の開業率は、OECD諸国中でも最低ランクではありますが、起業したいニーズというものは、それなりにあるワケです。特に近年は、ベンチャー企業の創業が相次いでおり、全国の自治体で起業塾などを開催する動きも広がっています。

そうした起業を目指す志のある若者を集めることができれば、どんな過疎地であっても、情報通信業を生み出すことは、不可能ではないのです。

そして、地方にはその土地にあるべきものしかない。歴史的な背景のある史跡や町並み、生活上の基盤である商業施設などその土地に根付いた意志が介在している。都市にはなくて、地方には資源があるのです。

一方で都市部ではすでに一般的になっているけれど、地方の過疎地にはまだない。地方には、まだ誰も存在を知らなかったり、必要性が理解できていないというだけで存在していない仕事がたくさんあります。

過疎地にIT企業を造り、地域をIT化する。これだけでも、まず地元メディアに引っ張りだこです。一方、都内でウェブ制作会社を立ち上げたところで、プレスリリースを拾ってもらうのも大変です。仕事をつくれる人にとって、地方はブルーオーシャンでしかないのです。

そして、なにより地方の過疎地は、そもそも起業・副業大国なのです。地方には、農業という個人事業主がたくさん存在しますし、勤め人との兼業、すなわち副業が昭和の昔から当たり前に行われています。副業禁止の公務員でさえ、農家と兼業している例は珍しくもありません。

地方では、もともと多様な働き方をするのが普通です。
農家を意味する言葉として使われがちですが、「百姓」という言葉は百の姓、すなわちたくさんの人を指す言葉であり、その人たちの生業すべてを示すものだ、と言われています。農家が百姓と呼ばれるようになったのも、それだけ多様な働き方をしていたからです。もともと百姓がたくさん住んでいる土地柄である地方の過疎地って、実はこんなにも自由な働き方が浸透している。そうした土壌がまったくない都会に比べて、地方の過疎地は働き方の自由度が高いんです。

「地方でいきなり起業しようなんて人いるワケないだろ!」といった声が聞こえてきそうです。いないのであれば、育てればいい。やりたい人を集めればいいだけです。若者が求める仕事であり、ネット回線さえあればどこでもできる。
八幡平市は、そんなITの仕事をつくれるプレイヤーを育てるオリジナルの事業を行っています。それが、「起業志民プロジェクト」です。

起業志民プロジェクトは大きく3つの柱で構成されています。

1.宿舎も含めて無料のスパルタキャンプで人材を育成
2.家賃5年間無料のシェアオフィス・八幡平市起業家支援センターで活動
3.資金調達面で必要に応じて投資事業会社などとマッチング

この3つを経て、起業に至ったメンバーが、こんどはスパルタキャンプに帰ってきて後進の起業家志望者を育てる、という知の好循環を形成しています。育てた起業家が、次世代の起業家を育てるという、他に類例のないIT起業家育成エコシステムです。

スパルタキャンプは、受講料・宿舎にかかる経費までもが無料で、参加資格は高校生以上であれば誰でも可、という行政のプロジェクトにしてはちょっと破天荒な感もありますが、このキャンプを入り口にして、起業家やフリーランス志望者が世界中から集まりはじめています。

プロジェクトを通じて、国内外から移住する人が増えていますが、まさしくここでも「楽しさ」がキーワードになっています。スパルタキャンプを契機に移住したみんなに聞いてみると、一様に「ここに来たら何か楽しいことができそうだから」「何かおもしろそうだったから」といった答えが返ってきます。

志を同じくする仲間と、1カ月もの長期にわたり起居をともにして、切磋琢磨し合う。こんな経験は学生時代の部活以外ではそうそう体験できませんよね。スパルタキャンプは超濃密な体験を通じて、八幡平という地域とそこに住んでいる人への関わり合いを半強制的に作り上げるという仕組みで成り立っています。

僅かな期間でも、住み着いて、濃密で面白い経験をして、ここで楽しく働いて暮らしていける、という明確なイメージを持たせていることが大きな要因だと考えています。

おもしろい活動を軸に人が集まっていている八幡平市の実例を紹介しましたが、正直なところを申し上げますと、地方創生の本筋から言うと、邪道の類であることは否めません。日本全体の人口が減少する局面に入って久しいというのに、一地方都市が他の地域から人を集めるというのは、非常に議論が分かれる点です。何より地域から人口が流入しているから都市が成立しているという側面がある以上、国全体で考えた際には、必ずしも理想の形ではないのかもしれません。

国が推進しようとしている「働き方改革」の形がある程度見えてきたところですが、テクノロジーの急速な進歩には、まだまだ社会制度が追いつけていないのが実態ではないでしょうか。国内ほとんどの地域において超高速インターネット回線を利用できる環境が整い、スマートフォンやPCが一人一台以上普及したことによって、これまで考えられなかったような働き方やライフスタイルが次々と生まれています。

ネットを通じて仕事を受注し、プロジェクト単位で企業の仕事に参画するフリーランス。PCとわずかな手回り品を持ち歩き複数の拠点を持ち暮らすデュアラー。さらに一歩進んで定住地を定めず鞄一つで旅するように暮らすアドレスホッパー。様々な住み方、働き方が広がりを見せはじめています。
いずれも、定住して企業に終身雇用されながら子供を生み育てるという、これまで行政が想定してきた生き方とは一線を画する暮らし方です。

こうした多様な働き方、住み方、ひいては暮らし方が生まれてきたのは「その方が楽しそうだから」に他なりません。自由に働き、自由に暮らす。誰もが一度は夢見るライフスタイルですが、ハードルが高すぎるために実際にそうした生き方に踏み切る人は多くありませんでした。
憧れとして、あるいはフィクションとして夢想していた生活を実際にしている人が、SNSの向こう側にたくさんいて、とても楽しそうにしている。そうした暮らしをサポートするウェブサービスやインフラがどんどん整い、日を追うごとにハードルが下がり続けています。この結果、現実の生き方として自由なライフスタイルを選択する人が増え続けているのです。

こうした流れは、都市だけのものかというと、そうではありません。むしろ、起業・副業先進国であり、歴史的に多様な働き方を受容してきた地方にこそ、フィットするものなのです。

それでは、地方の過疎地が目指すべきまちの姿とはどのようなものなのか?
答えは単純明快です。

楽しく働き、暮らせる、次の世代に住み継がれるまち。

起業志民プロジェクトが目指しているのは、自由に働き方を、ひいては暮らし方を選択できる人を増やし、そのためのプラットフォームをつくることでもあります。これによって、自由に楽しく働ける、という地方で脈々と受け継がれてきた「まちの遺伝子」を活性化させる。これをプロデュースするのは、まさに自治体とそこで働く私たち公務員に他なりません。

地方の過疎地が、人口減少時代に立ち向かい、克服できる道は、この先にあります。八幡平市の起業志民プロジェクトは、ほんの一例に過ぎません。
世界に広がる新しい世界観をつくり出すことは、日本全国どこのまちにでも可能です。さぁ、未来をはじめよう。

八幡平市 中軽米真人さんコラム より抜粋

なぜ若者は「まち」を出ていくのか-過疎地は人口減少に立ち向かうことができる#1 

地方にないのは「仕事」じゃない-過疎地は人口減少に立ち向かうことができる#2

“何もない”地方はブルーオーシャン-過疎地は人口減少に立ち向かうことができる#3

何かおもしろい、八幡平市の破天荒な起業家支援-過疎地は人口減少に立ち向かうことができる#4

新しい暮らし方を公務員はプロデュースできる-過疎地は人口減少に立ち向かうことができる#5

所感:

私自身このコラムでかなり勇気づけられました。というのも自分自身が高校卒業で地元大分を離れた時の理由が良い条件の仕事を求めて、だったからです。そして地方創生の鍵がここにあり、まさに大分の明るい未来の兆しを感じたからです。

県内でも、すでに取り組んでおられる団体もあることだと思いますが、今後のインフラ事業、農林漁業の分野でも自動化の流れを勧めていけば、仕事は山のようにあるわけで、AIなど情報通信は益々栄えることでしょうか。

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